夏は庇で決まります


『家の作りやうは、夏を旨とすべし』

 

兼好法師が徒然草で記した有名な言葉ですが、現代ではある意味正解、ある意味不正解です。

 この言葉の続きは、

 

『冬は、いかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居(すまひ)は、堪へ難き事なり』

 

となるのですが、断熱という概念のなかった当時、冬はひたすら着込んで過ごせば何とかなるが、

夏はどうにもならない、とにかく建築的には、夏を旨に建てておきなさい、という教訓です。

 

では断熱と言う概念がある現代ではどうでしょうか?

冬は「外皮基準って?」で述べたように、とにかく外皮(外壁、屋根)の断熱でどうにかなりますが、

夏は断熱だけでは片手落ちで、やはり『遮熱』という所作が必要になります。

これが兼好法師の言う『夏を旨とすべし』にあたります。

 

では、建築的な夏の所作とは何かと言いますと、

 

①庇を大きく出して、直射日光を室内に入れない。

②良く風が通る間取り、設えにする。

 

にあたります。

 

上記は熊谷に立っている「economaⅡ」の断面計画ですが、屋根の庇を大きく出して、

 

夏場は窓から出来るだけ直射日光を入れない計画にしています。

 

またほぼ全ての窓の上に30センチの小庇を付けており、屋根の庇で押えきれなかった直射日光を、

2重の構えで押える設えにしています。

 

この他にも、②よく風が通る間取り・設えにするためには、

家の建つ地域の夏の卓越風(よく吹く風)の向きを、

アメダスデータで確認し、その方向の窓と、反対側の窓が直接通る間取りにする必要があります。

 

また内部の扉もドアではなく、できるだけ引戸にしておく事で、

開け放して風を通す事ができるようになります。

 

『家は夏を旨とすべし』は、現代でも通じる教訓なのです。