太陽の日差しは、南側から入ってきますが、
ではその南側に高い建物があったら・・・・
都心で便利な敷地ほど、周囲に高い建物が建ちがちです。
上の動画の敷地は、南側に道路はあるものの、
その反対側に10階建てのマンションがそびえていて、
午前中は日が当たらないだろうなぁ、という敷地でした。
東西にも3階建ての住宅が密集していて、
どの方向にバルコニーを持ってくるか、
基本プラン段階から検討が必要になります。
周囲の建物の高さと大きさを調査し、
日あたりシミュレーションにかけてみたのが上記の動画です。
一番日照時間が短く、太陽高度が低い(=影が長くなる)冬至の
結果ですが、やはり、11時までは南側のマンションの陰になって、
ほぼ日差しは入ってきません。
午後からはようやく日差しが当たりますが、
今度は15時ぐらいから西側の建物の陰になり、
2階では5時間ぐらいのしか日差しが入らないことがわかりました。
そこで、この短い日の入る時間を最大限に生かすために、
南西の方向に大きな窓を取り、西側にバルコニーを持ってくることで、
部屋の中に十分に太陽の熱を取り入れる計画にしました
上記の日差しが部屋の中にどのように入ってくるかの
シミュレーション結果です。2階リビングで、
効果的に部屋の中に日差しが入ってきていることが確認できます。
南側に大きな窓を設けがちですが、この敷地の場合は、
「日差しを取り込む」という面ではあまり期待ができず、
南西側に開くことが重要ということがわかります。
日あたりシミュレーションを年間通じて回すと、上記のような、
どのぐらいの時間、どの範囲に日ざしが入ってくるか、
月ごとに積算した結果が出てきます。
お日様の暖かさが恋しくなってくる11月~3月は
十分に室内にお日様を取り込め、
暑さをしのぐために日ざしを遮りたい7月~9月は、
十分に日ざしをさえぎることができてるのがわかります。
家の中に取り込んだ日ざしは室内を温め、暖房費を削減してくれます。
その室温の変化については、次のエントリーでお話ししますね。
これが太陽の軌跡と周囲の建物を織り込んだシミュレーションをしないと、まずわからない「現実」です。
建てた後、住み始めてから気が付いても、
すでに時遅しで、もうどうすることもできません。
パッシブデザインでは、事前予測をどれだけ綿密に重ねるかが重要なポイントです。
みんなのオフグリッド研究所では、
設計初期段階にできるだけ周囲の環境の調査を行い、
日差しや断熱性能などのシミュレーションを行いながら、
敷地に最適なプランを模索していきます。
*おおいで研究所長:技術的解説シリーズ