今日は、私が「目から鱗」だったセミナーのお話を。
先日HEAD研究会という、住宅、建築のストックをより有効に生かせないかという事を追求している、
建築を取り巻く人々の集まりのシンポジュームに行って来ました。
お題は「エネルギーと健康」。
直接関係ない様な2つのコトですが、こと住宅に関しては密接不可分な関係にあります。
家の中が寒い
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エアコンを強めON
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部屋の空気は暖まるが、床が冷たい
(エアコンは空気を通じて部屋を温めるので、壁や床は冷たいままの事が多いのです。)
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寒く感じるのでさらに温度を上げる
(寒さは温度差でも感じるので、温度差が少なければ温度が低くても寒く感じない場合もある)
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でも寒いから、風呂にでも入ろう
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寒い脱衣室で服を脱ぐ
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寒いところで服を脱いだので、一気に血圧上昇
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寒いから湯船にどぼん!!
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熱さで血管が開いて一気に血圧降下
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意識を失う。最悪の場合は心筋梗塞を起こす。
ただ、救急搬送のデータなどから引かれているので、
その住まいが「どの程度寒かったか」「どの程度、断熱性能との相関関係があるか」ということが、
ある程度まとまった形で統計としてみた事がありませんでした。
今回のゲストパネラーは、慶応大学の伊香賀教授で、建築方向から疫学的な統計を取りはじめた、
おそらくは初めての方かもしれません。
例えば、冬期に死亡者が増えるのは、上記の流れでも分かりますが、
では寒い地域ほど死亡率が上がっているかというと・・・・北海道は最下位。
次点は青森、新潟、秋田・・・と寒冷地が続きます。
上位は栃木、茨城と、関東近県から中部東海、関西へと続きます。
この相関関係、実は高断熱住宅の普及率とおおよそ相似の関係にあり、
高断熱住宅がより一般的になっている地域程、冬期死亡増加率も少ない事が分かります。
(ココで言う高断熱住宅は、2重サッシ又はペアガラスサッシがある住宅=おおよそ平成4年基準住宅です)
その中でも特異なのが広島県。
広島県はそもそも高断熱住宅の普及率が高く、そのせいか廻りの県よりも冬期死亡増加率が低くなっています。
実は広島県医師会では心筋梗塞、脳卒中予報を天気予報と一緒に流しているらしく、
温度変化と心筋梗塞、脳卒中の相関関係を、分かりやすく県民に伝えているトコロでした。
日々こういう情報に接していると、自然に家の中の温度変化にも敏感になりますね。
就寝時の室温が18度と超えているかいないかで、高血圧の発症確率が6.6倍も違うという結果!!
その確率は、肥満(4.1倍)よりも、喫煙(1.02倍)よりも、塩分濃いめ(1.9倍)よりも断然高い。
生活習慣をいくら気をつけても、温度変化の大きい住まいにすんでいるだけで、
チャラになるぐらい危険性が高まるという。
もうココまで行くと、新築で断熱性能を低いままにしている事自体が、作り手として「悪」に感じます。
そして、就寝時間帯の室温が低い程、高血圧、脳卒中の発病割合が高いというデータも出ています。
その温度差、高血圧では未発病群の平均最低温度が13℃に対して、発病群の平均最低温度が13℃。
この程度の平均温度を上げるぐらい、断熱性能のアップだけで充分達成できます。
しかし疫学的調査で「高断熱」と言われているのは、今建っている全ての住宅のなかの、
平成4年基準(新省エネ基準)以上の24%のみ。
平成11年基準(次世代省エネ基準)でさえ、5%しかないという事実。
kameplanでは平成25年基準を上回る事を最低基準としているので、
1%無いのかもしれません(泣)
しかし、ここまで室内温度が住まい手さんの健康に直接影響することが実証されている以上、
最低でも平成11年基準、新築は平成25年基準で義務化するべきでしょう。
日本の医療、介護費が今後増大し、国の財政を圧迫する事がおおよそ予測されている現時点で、
住まいの温度環境を少しでも改善する事が、医療費、介護費の増加を抑える事にもつながりますし、
なにより、健康でいられる事で、QOL(生活の質)を上げることにつながります。
何となくぼやっと感じていたものが、疫学的調査という形で見る事が出来た事が、
本当に「目から鱗」でした。