木造3階建ての実物大火災実験⁈

前回のエントリー「木造住宅は燃えやすい!?」で、一般的な火災の広がり方を、
火災初期〜中期〜終期に分けてお話ししましたが、
実験用の小さな小屋で、すべての火災性状を把握はできません。

ということで、国土交通省国土技術政策総合研究所
2012年〜13年に行なわれた実験の動画を見てみましょう。

まずは、壁、天井を木表しにした場合の火災性状です。




着火2分40秒程で、内部から炎が上がりましたね。
これを「フラッシュオーバー」と言って、窓ガラスが熱で割れた事によって、
一気に内部に酸素が入り、火炎が吹き出す現象です。
「バックドラフト」とも言いますね。

火が噴き出してからは内部、外部からもどんどん延焼し、
あっという間に燃え広がり、全焼へ至ります。
向かって左側はいわゆる「準耐火構造」の2×4の建物、
右側は、防火壁を挟んで建っている同じく「準耐火構造」の軸組構造の建物。
防火壁をはさんだ方が延焼が遅いのですが、
最終的には防火戸が開いてしまって、延焼してしまいました。
おおよそ2時間で、倒壊に至っています。




内部からは着火後の広がりがよりリアルに見えます。
2分ぐらいから壁燃え移り、その後は天井材からどんどん類焼していきます。
2分40秒でフラッシュオーバーが起きた後は、
一気に燃え広がりました。

この実験で得たデータや知見を生かし、次の実験が行なわれました。

内部仕上げは、壁が石膏ボード、天井が強化石膏ボード。
梁、柱は表しです。



前の実験とは違い、50分程経っても煙しか出ません。
仕方が無いので、追加たいまつを投入(笑)
1時間半ほどでようやくフラッシュオーバーに至りました。
その後も延焼はするも、倒壊には至りませんでした。



内部を見ても、家具や衣類代わりに置かれた薪が燃えるものの、
構造体への延焼は1時間15分ぐらい経ってから。
たいまつ追加されて、ようやく盛大に燃え出しました。

さらに、前2回の実験をふまえ、3回目の実験が行なわれました。


内部仕上げは壁:木仕上げ 天井:石膏ボード仕上げ。柱、梁は表しです。
前回の実験よりも内部の仕上げは燃えやすくなっています。

コチラは着火後10分で、なんと自然鎮火(笑)
再着火後46分でフラッシュオーバーに至り、135分で火勢が下がったので、消火に至りました。

この実験から見える事は、
1)家具や衣類などへの着火後、内装材へ着火するまでの時間がキー
2)内部を、壁:石膏ボード 天井:強化石膏ボードでは、上の階への延焼に1.5時間もかかっている。
3)内部仕上げを壁:木仕上げ 天井:石膏ボードに落としても、延焼に1時間以上かかる。
4)出火火元の天井、壁仕上げが不燃材料であると、延焼までの時間が稼げる。
ということです。

これ以外にも細かなデータが取られたようで、今回の改正の細かな部分に反映されています。

2013年の消防白書を見ると、消防車の現場到着時間は平均8分強で、
2、3回目の実験での建物スペックであれば、
早期発見〜消防到着時にはいまだボヤ程度で済んでいると考えられます。

つまり建物の耐火性能は、避難を考えても3階建てまでであれば木造でも充分対応出来、
内装を制限する事で、さらに規模を大きくしても対応出来る、と言うことです。

また、消防活動にある程度頼る現状を考えると、早期に火災を発見する事も重要で、
2006年から義務化されている住宅用火災警報装置を連動型にし
火災最初期に避難、通報する事で、更に安全性を高める事が出来ます。

このように、「木は燃えるもの」ということを、補い、強化する技術、知見は日々進化しています。

昔からある自然素材であり、継続的な国内生産が可能な木材をより広くつかう事が、
住まいの快適性を高める事にもなり、国土の自然環境を保全し、
林産業の持続にもつながります。

そんな建築を、 kameplanは推進していきます。