中銀カプセルタワー 内覧

先日、銀座の中銀カプセルタワーの内部を見学させていただける機会に恵まれました。

というのも、Motion-Galleryというクラウドファウンディング上で、
この「先を行き過ぎた」建物を修繕し、なんとか建替えを避けて残せないか?
という運動を進められているオーナーを知り、是非是非と賛同させていただいたリターンとして、
内部見学の機会に恵まれました。

10平米(3坪強)の小さなスペースに、ユニットバス、トイレ、居住空間を詰め込んだとても濃密な空間。
現在のビジネスホテルの空間構成の原点となったとも言えるビルなのです。

オーナーさんとの1時間強の見学とお話の中で、建物の健全性にとって非常に厳しい局面に来ていること、
その建築的原因が防水と換気にある事、改修にはアスベスト除去という大きなハードルがある事、
当時あまり詰めてられなかった区分所有の権利行使により、大規模修繕が事実上できない事等、
様々なお話を聞く事が出来、今後集合住宅等の区分所有物件が直面する問題を、
「カプセル形」という現在でも未熟な建築が、いち早くあぶり出してしまった印象がありました。

しかし、黒川紀章やメタボリズムを推進した建築家が、
建築を入れ替えて永続化させるという社会資本のストック更新の一つのやり方を、
昭和47年(1972年)に提示してみせた、ものすごく「先を行き過ぎた」実験的な建築であり、
その実験が50年近く過ぎた今、求められているのではと思い、賛同させていただきました。

実際の建物は、ボンデ鋼板で構成された外壁を始め傷みが激しく、雨漏りがあちこちからしている上、
設備更新もままならず、当時先進的であった集中給湯は、給湯管の劣化から数年前から停止した状態であったりと、
まさに「待った無し」の状態でありました。

また、設計当時「空調」という概念が「換気」「温湿度調整」の2つの要素からなっていると言うことが、
このような区分所有物件にまで行き渡っておらず、換気が出来ないはめ殺し窓と吸排気換気口の不在、
温調のみをまかなうファンコイルユニットのみの設置で、しかもカプセルなので気密性が高く、
自然換気がほぼ期待出来ない空間となっていました。

元々の換気不足+雨漏りも相まって室内湿度が常に高い状態となり、
内装の劣化が急速に進行し天井落下やアスベスト暴露を伴う廃墟化の大きな原因であり、
目に見える設備更新や防水の改修より、まずは手をつけないといけない部分ではないかな、と。

換気はどうも「3種換気(排気)」がちょこっとある様でしたが、
現在雨漏りを伴っているということは内部に水を呼び易い「3種換気」よりも、
内部を加圧出来る「2種換気(吸気)」の方が適しているのではないかな?
であれば、温調が多少でも出来る空気集熱形の換気システムによって、
10平米程度の換気はそれほど難しくないのではないかな?
そんな「妄想」を帰りすがらしていました。

この意欲的な建築、このまま取り潰してしまうにはあまりにももったいない。

何とかしたいものです。