坪単価で比較する、というコト【その2】

前回は、車を面積で割って比較してみましたが、
車の場合、面積の算定方法自体が法律で定められていて、
「希望小売価格」÷「諸元表のタテヨコ寸法」=坪単価
という「諸元表のタテヨコ寸法」のぶれがメーカー間で違う、という事も無いので、
まだ比較としては暴れがありませんが、住宅の場合、

 

坪単価の「坪」=施工床面積の算出基準がありません。

もちろん、建築基準法上の床面積の算出基準は厳密にあり、
kameplanが算出しようと、ほかの工務店さんが算出しようとも、同じ数値になります。

これが「施工床面積」になると、全く話が違ってきます。
例えば、

こんなプランを例にとりますと・・・・

赤色の部分が建築基準法で言う「延べ床面積」の範囲になり、
この面積は誰が出そうと同じ面積になります。
ちなみに、このプランの場合の延べ床面積は116.76m2/35.32坪になります。【延べ床面積とします】

ここからが施工床面積の分かりにくいところなのですが、
「施工が入る面積はそこだけじゃないんですよ〜」ということで、

青色の部分、1階の玄関ポーチ、2階のバルコニー、吹き抜けを参入したりします。
まあ、ポーチの上には建物があるし、バルコニーも防水やデッキ材や手すりなどがあるので、
施工する面積としていれてもいいかなぁ、とも思います。
この面積が33.32m2/10坪になります。【施工床面積①とします】

さらに、「うちは丁寧な仕事しているから、施工する面積はもっと多いぞ」といって

緑の面積も参入したとしましょう。
この部分は玄関のたたきや、お風呂前や南側のデッキ、2Fの上にある小屋裏収納などが入っています。
もちろん、小屋裏収納も床を張って照明を付けたりする手間がありますし、
デッキも単純に板を張るだけではないので、
施工床面積に入れたくなる気持ちは分かります。

この面積が44.23m2/13.38坪になります。【施工床面積②とします】

では、この家の工事費を仮に2350万円とすると、

【延べ床面積】(誰が出しても変わらない面積)では、
2350万円÷35.32坪=66.5万/坪
となります。

ここに【施工床面積①】(業者独自のローカルルール)を合算すると、
2350万円÷(35.32坪+10坪=45.32坪)=51.9万/坪
となります。坪単価で言えば14.6万/坪も安くなりました(笑)

さらに【施工床面積②】(業者独自のローカルルール)をを合算すると、、
2350万円÷(45.32+13.38坪=58.7坪)=40万/坪
となります。さらに26.5万/坪も安くなっています(笑)
建物は変わっていないのにローコストビルダーのチラシに出そうな坪単価です。

ちなみに、このプランの建物は建物本体2350万円で竣工できました。
(外構250万、諸経費150万、合計2650万円)

つまり、坪単価のベースになる「施工床面積」とは、施工者のローカルルールでの算出が基準になり、
業者間で違うローカルルール同士を、「坪単価」というおおざっぱな目安で計っているんですね。
こういう基準を、何も知らない一般の方に触れ回り、優位性を誇るやり方はどうかなぁ、とkameplanは考えます。

もともと「坪単価」という概念は、大工手間の算出方法が始まりで、
大工さんに「坪○○万でどう?」という発注の仕方が起因です。
この発注方法は今もあり、面積の割に難易度が高いか低いかなど、
価値観をある程度共有できている業者間でやり取りされているコトなんですね。

今回は建物本体金額を2350万円で固定し、同じプラン上で面積算出をした場合でしたので、
比較的分かりやすくなりましたが、
これがプランも無く、本体金額の設定も無ければ、何を基準にしているのかも分かりません。
建築基準法上では、吹き抜けも、小屋裏収納も、玄関ポーチもデッキも、面積には入れません。


「何が含まれているかよくわからない坪単価」×

「どこまで含まれているのかよくわからない施工床面積」=

建物本体価格。

変数どおしで掛けても、出てくる数字は変数でしかありません。
この変数にお施主さんが一喜一憂しているのが現実です。
住宅業界とは、なんともトホホな業界です(泣)

お施主さんに最も重要な事は、
「いったい全部でいくら掛かり、ローンでいくら、自己資金でいくら支払う計画であるか」という事。
・月々の支払いに無理が無いか。
・変動する金利に収入がついて行けるか。
・建物の耐震性能、断熱性能はどうなのか。
・建物のメンテナンスにいくらぐらいかかるのか。
・将来の子供の成長や自分の加齢に建物が対応できるか。
・健康安全性の高い建材を使っているのか。
すべて数十年という長い時間軸で、じっくり考えるべきものです。

設計事務所は図面を書くだけでなく、上記の資金計画のお手伝いや、
施工業者の見積りの精査(入っていないものが無いか、不当に高いものはないかなど)。
予算とはなれてしまった場合の減額案の提示。
クライアント希望の追加工事の工事費精査。(工事として行う意味があるのかと?いうアドバイスを含め)
見えない部分に手抜きが無いかの現場チェックなど、
一般の方が思われている設計業務以外の業務が多くを占め、
その事でクライアントさんが、いろいろな面で「安心して住まえる家」を建てる
「監査役」でもあるべきだと考えています。

家作りを計画されている方、
坪単価で一喜一憂するのではなく、総額をふまえた資金計画と、
その総額に見合い、自分の価値観に合う施工者、設計者と家作りを進めると、
長い目で見てお得だと、KAMEPLANは考えています。